番外編:Best friend

1

あの頃の俺は若かったんじゃない。
……幼稚だったんだ。



年下の柊の方が先に卒業して、
既に仕事を始めているのが悔しかった。

俺だって。
俺だって、学力も身体能力も低い方じゃない。
むしろ高いくらいだ。
柊が突出しすぎているんだ。

俺が必死で必死で“社会”に追いついたとき、
あいつはもう、慣れた顔で仕事をこなしていた。
こんなの、追いついたとは言わねぇ。
やっと、奴が“見える”位置まで来れただけだ。

俺と柊の差は、全く詰まらない。
いや、俺が引き離され続けているんだろう。

これが、才能の差ってやつなのか?
体質の違い? 生まれた家が違う?

知るか、そんなもん。
自分の可能性を諦める為の言い訳だろ、それ。
全然、格好良くねぇぞ。

俺だって、空間には強い。
柊に出来るんなら、
俺にだって……できるはずだ。

そう信じて、俺はがむしゃらに
頑張り続けた。必ず追いつく。
追いついてやる、追い越してやる……
いつもそう、思いながら。



俺の努力は、
想像していたよりもずっと早く……
上層部に評価された。
 
柊と同じチームで活動することになったのだ。


あのチームは柊以外はベテランばかりだと
聞いていたが、そこに呼ばれるとは……
なんだ、やっぱり俺も出来るんじゃねーか。
そらみろ、いつの時代だって
諦めないのが一番大事なんだぜ。

「君が新入りの空山君か。
 まぁ、気楽に行こう」

オッサン……じゃない、
そこそこ風格のある先輩にそう言われた。
確か名前は、平尾さんだったっけかな。

「はい、俺、とにかく頑張りますんで!!」
「君のそういうところに期待してるんだ。
 これからよろしくな」

うん、なかなか感じのいい人だな。
こういう人のいるチームなら、
人付き合いが苦手な柊が
仕事が出来ている……というのも
納得が行く。

「けど、ここって“あの”柊も
 所属してるんですよね?
 俺なんかが、本当に役に立てるんスかね?」

本音は1%も含まれていないが
柊がどう思われているか聞けるかも知れない。
それを知ることが出来れば、
奴に勝つ方法だって見えてくるかも知れない。
そう思って、話を振ってみた。

「ははは、何を言っているんだ。
 君と柊君は学生時代、
 同じクラスだったこともあるんだろう?
 そして、君も結構いい線をいっていたと……
 データにあったが?
 君と柊君が一緒にいればどうなるか、
 実はもう……よく知っているのではないのかね?」

「げっ」

「ライバルの情報収集は、
 もう少しスマートにやるものだよ。
 君は熱すぎる。若くていいと思うがね。
 わっはっはっは」

オッサンは笑いながら歩き去っていった。
くっそう、格好悪いところしか見せられなかったぞ。
今のって、第一印象“最悪”じゃね?
こうなったら、仕事で名誉挽回するしかねぇな……。


それから、忙しい日々が始まった。

さすがベテランばかりのチーム、
仕事の入り方の頻度が違う。
休む時間はきっちりもらえるが、
どれだけ寝ても寝た気がしない。

俺にはまだ経験が足りなさすぎるのだろう。
だが、すぐに慣れてやるぜ。


しっかし、柊の奴は……
いつ見ても涼しい顔をしていて
疲れを全く見せない。

というか、あいつの表情が
変わるところも最近見ない。

それが、“大人になる”ということ
なのかもしれないが……。

個人として見れば、学生の頃より
意味わかんねぇ奴になったんじゃねーの?



1日中、全く同じ表情しかしねぇ奴なんて
面白くもなんともないぞ。
そんなので本当に、ちゃんと……
上官や先輩とうまくやっていけんのか?

俺は認めないね。



「おい、空山」
「うわっ、驚かせんなよ!」
ある日、柊の方から話しかけてきた。


同じチームにいるから、
挨拶したらとりあえず最低限のリアクションは
返ってくるんだが、それ以上はない。

こいつがそういう奴だということは
知っていたから、1日の会話が挨拶のみでも
全く気にしていなかった……が、
向こうから話しかけられてきたらかなり驚く。


「……疲れているようだな」
「別に疲れちゃいねぇよ」
お前に心配される筋合い、ねぇし。


「よく話す奴だったろう、お前は」
「あれは、暇だったから絡んでただけだ」

「……暇?
 暇だったから、俺のところに来ていたのか?」
「だってお前の近く、女子天国だし」

「……本当に暇だったんだな」
「そうだって、言ってるだろ」
それを間に受けるのかよ、こいつは。
暇だったわけねぇだろ。
飛び級してきたイケメン天才男子のお前に
女子を取られて、必死だったんだってば俺は。

まぁ、結果は惨敗で……
お前の引き立て役に
なっちまっただけだったけどな……。


「……それはともかく」
柊は懐から電子手帳を取り出す。
多分、スケジュール管理に使ってるんだろう。
通信用の端末は、
決められた物しか使えないからな……ここ。

「なんだよ?」

「最近“飛びすぎ”だ、お前は。
 少し休め」
「うっせーよ。
 俺の3倍飛んでる奴に言われたくねーよ」

「俺とお前は体質が違……」
「聞いてねーし!!」

「……そうか。
 とりあえず、今の調子でやると
 確実に体調を崩す。気を付けろ」
「俺のことは俺が一番分かってんだよ!
 年下の癖に先輩面すんな!!」

あー、もう。
実際先輩ってことになるんだが、
こいつに言われると無性に腹が立つ。


2

だが、身体は嘘をつけない。
経験者の言うことが大抵当たるのも、
過去にそいつが通った道だからだ。

俺は柊が予想した通り、体調を崩しかけていた。
仕事を終え、ゲートから出た俺は、
床をしっかり踏みしめることが出来ていない。
自分でも分かる。
今……少しふらついている。

……まだ、いける。
少しふらついているだけだ。
今日、しっかり眠れば――治る。

そうだ、帰りに誰にも会わなければいい。
見つからなければ、誰にもばれない。

報告をちゃんと入れているから
“いつもより疲れたから直接帰った”と伝えれば
問題ない。これはそういう仕事だ。


人があまり通らない道を使った。
居住区まで、あと少し。
誰にも会わずに済むと……思っていた。


「……柊!?」
暗い廊下の隅に、そいつはちんまりと座っていた。

「空山か」
「何やってるんだよ、こんなところで」

おいおい。
俺だって疲れてふらふらしてるのに、
ついうっかり駆け寄っちまったぞ。

「座っているんだが」
「見りゃ分かるよ!
 そんなこと聞いてんじゃねぇ!!」

「……なんだ?」
「なんで、こんなところで座ってんだよ!
 廊下は座る場所じゃねーぞ!」

座っているこいつには……
そう、いつものオーラがない。
疲れて座り込んでいるように見えたんだ。
今の俺が、そうしたいのと同じように。

こいつも、疲れているように見える。


「いや、たまにはいるだろう。学校にもいた」
「社会人のやることじゃねーよ!」
学校って……そりゃ不良の連中じゃねーか。

「…………」
「で、なんで座ってるんだよ?」
ごまかそうとしたって、そうは行かねぇ。

(話を逸らしたのは俺自身らしいのだが、
 俺は知らん)

「…………」
「黙り込むなよ。何とか言え」

「……空山」
柊は突然、俺の肩を……どん、と押した。

結構疲れていた俺は、
そんな不意打ちを食らうとは
予想もしていなくて……

そのまま、ふらふらと何歩か後ろへ下がってしまった。

その隙に柊は素早く立ち上がり、
俺に迫ってきた。

「俺は、“休め”と言ったはずだが?
 自分のことは自分が一番、
 分かっていると言っていたな?
 今のお前は、
 体調管理の出来ている奴には見えないが」
「……るせぇ」

柊は凄い形相だ。
なんつー怖い顔してやがるんだ。

なんでこうなるの!? ねぇ、なんで?
相手の具合が悪そうだから、
ちょっと心配してやっただけだよ俺?
なんで俺より具合悪そうな奴に、
体調について説教されなきゃいけないわけ!?

なんか、おかしくねぇ!?

「とにかく、一度きっちりと休むべきだ」
「今にも倒れそうな奴に言われたくないね!!」

「…………。
 俺と、お前は違…」
「聞いてねーし!!」

「そうか」
「そうだよ。てかお前が休めよ」
「よく眠れば治る」

俺だってそうだよ。
寝りゃ治るんだって。
あー、もう。さっさと帰って寝てぇ。

「…………」
「って、えええええ!?」

さっきまでもの凄い迫力で
俺を睨んでいた男は、踵を返し立ち去ろうとした。

しかし俺に背を向けた瞬間、
操り人形の糸が切れた時のように……
かくーん、と倒れそうになる。

「ちょ、ちょ!!」

相手が誰だとか、
なぜ俺がそうするのかとか、
そんなことは何も考えていなかった。

というか、考える暇もなかった。

俺は……なんとか、柊を倒れさせずに済んだ。

「……参ったなぁ。
 最初にこうするのは、可愛い女の子がいいって
 思ってたのに。
 また、俺の夢を盛大にぶち壊しやがって」

どうせこいつは、そんなことに
気づいてもくれないんだろう。

けど、成り行きとはいえ
最初に抱き合うのが男ってどーなのよ!?
ひどくねぇ!? 俺の人生、散々じゃねぇ?

言っとくけど、これは事故だからな!
ノーカウントだ! ノーカウントだっ!!

明日になったら忘れてやる。


「しかし、驚いたな」
今の状況ではなく、その少し前の状況に……だ。

どういう考え方をして生きていたら
あそこまで自分の体調を後回しにした態度になる?

また“俺とお前は違う”と言いかけていたけど……
そんなに違うか?

何があるんだ、一体。


俺は自分の体調のことを隠したくて
こんな道を通ってきたが……
そこで俺よりも具合の悪い奴に出会ったのなら
話は別だ。
残念ながら、今の俺に
こいつを担いでいく体力は残っていないし
何より柊は“倒れて”いるんだ。
連絡しておくべきだろうな。

「……あー、平尾さん。
 居住区の前のH-5区画の廊下で柊とばったり
 出会ったんスけど。
 なんかこいつ、すげぇ疲れてるみたいなんですよね。
 ちょっと押したら倒れちゃって」

……押されたのは、俺だけどな。
まぁ、理由なんて適当に作れば良いんだよ。

「そーなんです。
 で、恥ずかしい話なんですが
 実は俺もちょっと……。
 ……はい。そうなんです、ははは」

俺が最近、ちょっと無理してるのに気づいてるのは……
別に柊だけじゃなかったんだな。
オッサン(平尾さん)はすぐに状況を理解してくれた。

「医務室に連れて行ってやりたいけど、
 俺がこのザマなんで……
 ちょっと来てもらってもいいですかね?」

オッサンは快く引き受けてくれた。

「ありがとうございます。助かります」


だが俺は、この後……
さっきの柊のお説教がありがたいと
思えてしまうくらい、
醜いものを見ることになった。

「待たせたかな」
「そんな待ってないっス」

「そうか、そうか」
オッサンは笑顔のまま、柊をひょいと担ぐと……
俺にも手を貸してくれた。
俺はなんとか歩けるから、
そのままオッサンの後についていった。

しかし、オッサンの足は
引き返すどころか……居住区の方へと進んでいく。

「あの、平尾さん。医務室そっちじゃないっスよね?
 それとも近道とか?」
「いや、彼には必要ない」

「……はぁ!? でも、規則では……」
倒れた者は、必ず医務室行きのはず。
だから、根性を見せたい奴ほど
なんとか自力で部屋まで帰るものだ。

「“柊 冬紀”という男は
 存在そのものが規格外の人間だ。
 そんな超人に、凡人用の規則を
 当てはめる必要もあるまいて」

「そういう問題ではないのでは?」
「明日から、またいつも通り働いてくれるさ。
 君は心配しなくていい」

嫌な感じがした。
そう、これは……
性根の腐った、嫌な大人の匂いだ。


「何の心配の話をしてるんですか」
「さて、ねぇ」

このオッサン……
いい上司だと思ってたけど、今日で終わりだ。
本気で見損なったぞ。

オッサンを説得するのは無理だろう。
今も、自分が楽をするために
柊を使っているということを……
そうとも取れる言い回しをしつつ、明言は避けた。
俺が睨んでも、全く動じてねぇ。
多分、こんな視線を向けられるのにも
慣れているんだろう。

「俺はこいつが心配なんで、
 それだったら医務の人に迎えに来てもらいますわ。
 もういいっス。
 手間かけてすみませんでした、平尾さん」

「私はここにいてあげよう。
 でないと、君が困るだろうからな」

いや、すっげえ邪魔なんだが。
今すぐどっか行ってくれ。

……と、思いながら、俺は医務室に通信した。

「あー、ID5257258の空山 茂っス。
 ID5257212のひいら……。
 ……え? なんて?
 よく聞こえませんでしたが」

実際には、よく……聞こえていた。
耳を疑っただけだ。

『その方なら大丈夫ですよ。
 そのまま、お部屋に運んであげてください』

「いや、でも規則だと……」
そいつが倒れたら、如何なる理由があろうと
医務室行きってことになってるだろうが。

『規則自体も古いものですから』
「……そうかよ。よく、分かったよ」

効率とか、慣例とか……そういうやつか。
あるとは聞いてたけど、初めて体験したぜ。

俺は通信の途中で、端末の電源を切った。
付き合ってらんねーよ。

柊は馬鹿だが、こいつらはもっとだ。
ついでに、馬鹿さの方向も違う。

俺は柊みたいなアホならなんとか許せるが
オッサンや今、通信に出た医務の奴みたいな
馬鹿とは絶対に気が合わないんだ。
俺が、そいつを許せないから。


「……分かったかな?」
「ええ、とても。経験しないと分からないものですね」
オッサンの笑顔は、
俺にはもう……
薄汚い大人の、凶悪な笑みにしか見えなかった。

「なら、彼を部屋に運ぼうか」
「いえ、いいです。俺が運ぶっスから」

「しかし君も調子が悪いのだろう?」
「なんか、話してる間に治ったっス。
 もう大丈夫なんで、ありがとうございました」

俺はオッサンから柊をぶんどって、担いで……
よたよたしながら居住区に入った。

「“天才”というのは扱いづらいものだ。
 空山君など……柊君の足許にも及ばないが
 それでも……私よりは“使える”体質なのだろうな。
 ならば、少々生意気で気難しくても……
 こちらも我慢するさ。
 ……我々は、“仲間”なのだからな」

なんか聞こえてくるけど……
オッサンの呟きなんか、聞きたくも無いわ。
耳が腐るぜ。


そして俺は、なんとか柊の部屋まで辿り着いた。

実は、部屋につくまでに
何度か転んだし、うっかりこいつを
曲がり角の壁とかにぶつけたりもしたけど……
どうせ気を失ってるんだ。

あんなのに運ばれるよりマシだろ。

柊をベッドに寝転がしたら、
俺は床に寝転がった。

あー、もう駄目だ。
ここまでは意地でどうにか
歩いてこれたが、もう一歩も動けねー。
悪いが部屋借りんぞ、柊。床なら別にいいだろ。


3

「……んお?」
目を覚ますと、俺がベッドの上で寝ていた。
身体を起こすと、すぐにわかった。
これ、俺のベッドじゃねーわ。
ということはアレだ。柊のだな。

まったく、あいつはこの短期間に
いくつ俺の夢を壊す気だ。

初めて寝る他人のベッドは、
ホテルか、可愛い女の子のトコって、
思ってたのに。

「……気分はどうだ?」
「サイッテー」
柊はとっくに目を覚ましていたようで、
ニュースのチェックをしていた。

おーい、その位置にパソコン置くと
モニタが丸見えだぜ。
まぁ、他人を自分のベッドに寝かす機会なんて
そんなに無いとは思うけど。

「だろうな。次から気を付けろ」
いつも通りの淡々とした口調で、柊が言う。

「お前、腹とか立たないわけ?」
「……は?」
「お前も、気分悪いんだろ」

「……何が?」
「……はい?」

あれ? もしかして会話、噛み合ってない?

「俺はもう回復したが。
 お前、何時間寝たと思ってるんだ」
「……どんくらい?」

とりあえず、聞いとくか。

「48時間2分だ。つまり、丸2日だ」
「……そんなに?」

てか、2分ってどうでもいいじゃん。
そこは端数を切り捨てろよ。

「人間が、そんなに長い間眠り続けるのを初めて見た」
「俺も、そんなに爆睡したのは初めてだわ」

「とりあえず……医務に連絡して、診てもらった。
 あちこち捻挫してるから、
 本人が気が付かないようなら
 あまり動かさない方が良いと言われた」
「あー、それでこのベッドに……。そりゃどうも」

本当は礼なんか言いたくないが……仕方がない。


「後で、自分でもう一度医者に診てもらえ」
「……お前は?」

人のことを言えないのは、お前だろうが。
俺の捻挫は……あー、多分アレだ。
柊をここまで担いでくる最中に、
転んだりぶつかったりしたときのだろ。

「お前のついでに診てもらったが、問題ないそうだ」
「……へぇ」

杜撰なもんだな。

「おい、柊」
「なんだ?」

「お前、本当に何も思わねーの?」
「……あぁ、悪い。状況から考えて
 お前が俺を運んでくれたようだな。礼を言う」

「そうじゃねぇよ!! オッサンとかのこと」

うわー、ツッコミ入れるのも疲れてきたぞ。

「……平尾さんのことか?
 年長者は敬うものだぞ、空山。
 この際だから言うが、お前のその丁寧語ですらない
 敬語はどうにかならんのか」
「あんなん敬えるか!! お前は敬ってんのかよ!?」

「当たり前だろう。
 俺に色々なことを教えてくれた人だ」

即答すんな。あのオッサンに
何を教わったんだよ、こいつは……。

「あぁー、もういいわ。
 あと、これからは俺ももうちょっと真面目に休む」

呆れて、説明する気も失せた。
それに、今の時点では
あのオッサンが悪いかどうかは
俺の推測でしかない。

「ああ、そうしろ」
「お前も、ちゃんと休めよな」

「もう休んだ」
「そうじゃなくて……あー、もういいわ」

多分この話題はループする。
回避した方が良い。

俺は柊にもう一度礼を言ったあと、
自分の部屋に帰った。


自分の部屋に戻った俺は
“柊家”がなんなのか、“柊”が
どういう奴なのか……徹底的に調べた。

俺の知っている柊は、むかつく天才野郎だ。
つまり、等身大の方しか知らない。
あいつの、周りの評価や扱いのことなんて、
考えたこともなかった。

あいつが普段、どんな目で見られているのか。
どんな風に思われているのか。

つまり――俺以外の奴は
あいつをどう見ているのか……
そんなことを、初めて考えた。


……出てくる情報は、酷いものが多かった。
柊は空間に強い体質を
利用されているケースが多いようだ。
つまり、他の奴より随分余分に飛んでいる。
こんなデータ、
あいつが抜けたチームの履歴を見れば一目で分かる。

みんなどうせ、“わぁ、すごい”とか
“こいつは使える”くらいにしか
思ってないんだろうな。

柊は……あんたらが思っているよりは、
普通の奴だぞ。確かに、性格に問題はあるが。


仲間との連携がうまくいかなくて
チームを抜けたケースも
けっこう多いみたいだが……
それでも、これはあんまりだ。

“付き合いにくい奴”であることは
そいつに無駄な負担を掛けていい理由にはならない。
自分が不器用なせいで負担が多いのなら
それはそいつのせいだが、
周囲が意図的に増やして良いわけがない。

それが“付き合いにくい有能な奴”だったら……
そいつに良いことを教えるフリをして
能力だけを利用しようと考える奴がいたなら……。
俺から見れば、その者は鬼だ。
そしてその場所は人間の作り出す、醜い地獄だ。


……よし、認めよう。
確かに俺は、体質的には柊に劣っている。
遺伝子の問題だ、これはしょうがない。

だが、あのオッサンとならどうだ?
凡人のベテランと、
ちょっと能力のある若造だったら
けっこういけるんじゃね?

よし、決めたぞ。
柊はライバルだ。
それで……あのオッサンは、敵――だ。



この事件の後、俺とおっさんは
意見を何度も衝突させ……
数ヶ月後、チームは全く噛み合わなくなり
崩壊することになる。

その後も、柊のせいだったり、
俺のせいだったりして……
いくつものチームが解散し、
俺達は人の中を旅するように色々な人と組んだ。
 
そんな俺達を冷たい目で見る奴は多かったが
柊は元々そういう視線には疎いタイプだ。
俺が気にしなきゃ、それでいいんだ。


様々な人と関わっていくうちに……
はるちゃん、ちあちゃんという
非常に有能で面白い姉妹と、出会った。

この姉妹と力を合わせれば……
柊のどうにもならねぇ性格を、
変えられるかもしれねぇ。

俺は、そんな期待を抱くようになった。

そう、いつの間にか……
“むかつくクラスメート”は親友になっていた……。

俺もちょっとは、成長したんだぜ。




余談:IDの秘密(?)

ID 5  やってる仕事
  25 班
  7  居住棟のナンバー
下3桁  部屋番号


  • 最終更新:2012-04-13 07:50:26

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